土砂降りの雨の日が病院の予約日だった

土砂降りの雨の日に病院へ
雑記
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いつだったかまだ梅雨の時期のこと。

外が土砂降りの大雨で低気圧のせいか頭痛もひどいこんな日に病院を予約している。
あー運が悪いなあと思った。
もう別の日に予約を変更したいなと思っていたけど薬が明日でなくなってしまう。
しんどいけど仕方がない。ひどい雨風だけど行くことにした。

カーボンファイバーでできてるらしい傘だけど折れそうなほどの強風の中、鉾を構える兵士のように斜めに傘を掲げて視界の悪い道を進んでいく。

両手でしっかり傘をつかんでないと飛ばされそうな強い風。
レインブーツを履いていたけど斜めに雨が降っていて膝上はびしょ濡れ。
もう、衣服が肌に張り付いて気持ち悪い。
もはや傘が機能していないような状況。

そんな中でようやく病院に到着。

こんなひどい雨、本当に運が悪いったらない。
でも頭と靴下が無事なだけマシだと思うことにした。
滑って転んで漫画のような展開にもならなくて良かった。

院内に入るといつも混雑しているのに患者は3人くらいで空いている。
この雨だから人が少ないんだ。

なんて思ったけど、予約の時間を過ぎてもなかなか呼ばれない。
こんなに空いてるのに。
症状の重い患者さんでもいるのかな?

それからしばらく待っているとようやく名前を呼ばれて、診察はあっという間に終わった。
すると先生は改まった顔をして言う。

「突然なんですけど僕ね、今月いっぱいでここ辞めるんです」

突然のことに驚いた。
今月いっぱい?
だって、今はもう月末。来月って来週だし。

「来月から来られる先生は大学病院にお勤めで――」

ここは長年通っていた病院。
人当たりのいい先生で診察も丁寧だし信頼していたのに、来週にはもういないというのだ。

これが先生の最後の診察?
今まで先生には絶大な信頼を寄せいていた。先生だからいつも安心だった。
症状が変われば検査して薬を調整してくれたり、薬を変える時はきちんと説明してくれるとても丁寧な診察をする先生だった。

次に来られる方がいい医師だと説明する先生は患者の不安を少しでも取り除こうと話されていた。
まだ若くて元気そうに見えるけれど、去年に比べて痩せたようにも感じる。
ご病気だったりするのかな。
働く環境に不都合が生じたのかな。

いろいろ頭に浮かんだけれど辞める理由を聞かれても答えにくいかもしれないし、患者ひとりひとりに退職の挨拶をされて時間を取っていたんだなと思うと長話も気が引ける。

私は「残念です。さみしくなりますね」と返して、これまでのお礼を伝えた。

会計を終えて病院を出る。

次に薬をもらいに来た時は違う先生なんだなあ。合わない人だったらどうしよう。
別に病院がなくなるわけじゃないけど、医師が代わればここはもう別の病院みたいなもの。
今まですごく相性の良い先生だったのに。

そんなことを思うとなんだか急に感慨深く感じてしまう。
雨は小雨だけどじめじめしてるし。

近くの薬局に行って薬の処方を待ちながら、ふと思う。
予約を別の日に変更していたら先生に会うことはもうなかったんだな、と。
体調も天候も良くない中、無理して来たけどかえって良かったかもしれない。
もしかしたら先生は栄転かもしれないし、それなら応援しなきゃね。

薬を受け取って外へ出ると雨は止んでいた。

 

そして――。

「はいはい、そういう季節だからでしょうね」

調子が悪いと伝えれば季節の変わり目だから、と新しくこられた医師がモニターを見ながらふっと笑う。

また別の日に薬をもらいに行くと。

「前と同じ薬でいいですね」

前回と同じく、患者の目を見ずモニターを見て話す医師は流れ作業のように診察終了。
 

やっぱり前の先生に戻ってほしい……っっ!
 

しばらく通っているけどまだ新しい医師と目が合ったことはありません。

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